テニスのメイン種目といえば、相手と1対1で対戦するシングルスでしょう。
シングルスは、コート1面をいかに自分が広く使い相手に使わせないかということがテーマになります。
今回は、シングルスの試合におけるセオリーと基本の戦術・展開パターンについて解説したいと思います。
目次
テニスのシングルスにおいて勝つためのセオリー
テニスにもルールがあります。
ルールがあるから、ゲームの特徴が生まれます。
この特徴を把握してこそ、勝つための基本理論(=セオリー)を考えることができます。
言い換えれば、がむしゃらにポイントを取るという考え方は浅いですし、相手を打ち負かせればいいと考えるのも状況によっては得策ではありません。
まずは、そのルールの特徴を捉えましょう。
テニスは、(1セットマッチであれば)相手が4ポイント取る前に自分が4ポイント取ることを6回繰り返せば勝てるスポーツです。(厳密にいえばデュース等もありますがここでは割愛します。)
ここで「ポイントを取る」ことの意味合いを考えます。
1つは、ポイントを自分からポイントを取るようにすること、もう1つはポイントを取られないようにすることです。
これを「勝つテニス」と「負けないテニス」と呼ばせてもらいます。
勝つテニスとは具体的には①自分がエースを取る、または②相手にミスをさせることです。
負けないテニスとは、③相手にエースを取られない、または④自分からミスをしないことです。
わかりやすく表にしました。
エース | ミス | ||
勝つテニス: | ① 自分がエースを取る |
→ 優先 |
② 相手にミスをさせる |
↓ 優先 | ↓ 優先 | ↓ 優先 | |
負けないテニス: | ③ 相手にエースを取られない |
→ 優先 |
④ 自分からミスをしない |
表の通り、テニスでは「負けないテニス」よりも「勝つテニス」の方がはるかにリスクが高く、点を取ることよりも取られないようにすることの方が重要なため、優先順位は「負けないテニス」が先になります。
「勝つテニス」は、相手のミスや弱い返球を誘引する必要があるため、多少のリスクを負う必要があります。
一方で、「負けないテニス」は必ずボールを返すというシンプルな方針でプレーを継続すればよくなります。
また、実際の試合でもミスによるポイントの方がエースによるポイントよりも多いので、ミスをさせるあるいはミスを避ける方が優先となります。
ストレスが溜まるような最悪な試合ほど①~④の優先順位がバラバラなプレーをし、簡単な試合ほど①~④の優先順位を守ってプレーできているのです。
テニスのシングルスにおける戦術の考え方
前項の通り、テニスでゲームを取るにはまずは「負けないテニス」をベースに、「勝つテニス」を行うことが優先になります。
それを念頭において、以下の戦術の考え方を理解しましょう。
クロスとストレートのコース選び
一般に、ベースラインのプレーにおいてクロスとストレートの2種類のショットで考えると、どちらのショットの方がより安全でしょうか?
ここでは自分や相手の得意・不得意などは考慮しない前提です。
答えは、クロスです。
理由は2つあります。
1つはクロスの方がストレートに比べて距離が長いから、もう1つはクロスの方がストレートよりも通す部分のネットの高さが低いからです。
コートのサイドラインと平行に打った場合とコートの対角線上に打った場合では約140cm、シングルスポールとセンターベルトのネットの高さは約15cm(ボール2個分)も差があります。
つまり、ストレートに打てばかなり大きなアウトになるボールも、ストレートに打てば確実にネットにかかるボールもクロスに打てばインになるのです。
ラリーにおけるショットの高さ
よりミスをしないことを優先した場合、どのような球質のショットが好ましいでしょうか。
ボールがネットにかかれば当然これはミスになります。
そのためラリー中、特に余裕がないときは、ネットの高さギリギリを狙わず、少し高めで山なりのボールの方がミスは減ります。
あまり浅く高めのショットだと今度は相手に攻められてしまうため、ある程度深さも必要ですが、ミスするよりは、ミスの少ないショットを選ぶことは重要です。
ラリー中に自分が動くための時間と距離を作るショット選び
長い距離を走らされたり、準備する時間を失ったりすれば、自分がミスする確率も相手がエースを取る確率も高くなります。
これも単純に考えると、ストレートよりもクロスを打った方がより相手の返球に対して動く距離と時間に余裕が出ます。
理由は2つです。
1つ目はクロスの方がストレートより距離が長いのでボールが相手に届くまで時間がかかるからで、もう1つはクロスに打った方がストレートに打つより戻る位置が近くなるから(クロスに打った方がストレートに打つよりも動く距離が短くなるから)です。
クロスの方がストレートよりも距離が長いというのは前述した通りなので、同じ速度のボールを打つならばクロスに打った方が時間に余裕を作ることが出来ることは明白でしょう。
また、打った後に戻るポジションがクロスに打った場合とストレートに打った場合とでは異なります。
相手が打てる範囲の真ん中にポジションを取ることが基本です。
例えば、デュースサイドからクロスにボールを打った場合はセンターマークよりもややデュースサイド寄り、ストレートにボールを打った場合はセンターマークよりもややアドバンテージサイド寄りになります。
テニスのシングルスにおける具体的な戦術・展開パターン
では、実際にこれまでの戦術の考え方を用いて、シングルスにおける具体的な戦術・展開パターンを紹介していきます。
ゲームの種類
テニスの試合には、サービスゲームとリターンゲームがあります。
基本的に、サービスゲームをキープし、リターンゲームで数少ないチャンスを生かしてブレイクする形になることが多いです。
これを前提に戦略を組んでいきます。
それぞれの特徴を理解して、戦い方を考えることが重要です。
テニスのシングルスの戦術:サービスゲーム(サーブからの展開)
サービスゲームは常にサーブ「攻撃」からスタートすることが出来るので、攻撃を保ったまま短いラリーでポイントを終わらせることが重要です。
サーブで攻撃し、返ってきたレシーブをさらに攻撃してポイントを狙う、あるいはその後ネットプレーでポイントするという3~5ラリー程度で終われるとベストです。
そのためには、サーブのコース・球種の打ち分けの精度やその配球がとても重要になります。
サーブをワイドに打って相手をコートの外側に追い出したり、ボディーに打ってレシーブを詰まらせたり、センターに打ってエースを取ったりできると、攻撃のバリュエーションが増えるでしょう。
おおむね「ワイド:ボディー・センター(ティー)=7:3」の割合で打つべきだと言われています。
なぜなら、ワイドに逃げていくような回転系のサーブを打ち、3球目をオープンコートに打つことで相手を10m以上走らせることが出来るので、ミスをさせる・エースを取ることが容易だからです。
このパターンを軸に、ボディーやセンターのサーブを使うことでサービスゲームを固くキープすることが出来るでしょう。
テニスのシングルスの戦術:リターンゲーム(リターンからの展開)
リターンゲームは常にリターン「守備」からスタートするので、守備から中間、中間から攻撃へと移っていけるようなプレーをすることが重要です。
サーブを高い確率でコートに返し、相手の攻撃に耐えて中間へと持ち直し、あわよくば攻撃することで相手にプレッシャーをかけることが出来ればベターです。(相手は攻撃からはじまるのではやい展開でポイントを取りきれないとプレッシャーがかかります。)
そのためには、リターンの精度とその後の中間から守備よりのラリーが重要になります。
まずはサーブを返すことで、1球でも多く相手にプレーさせることを意識しましょう。
もちろん、深いコースを狙ったリターンを打っていきなり形成を逆転出来ればそれにこしたことはありませんが、リターンは返すだけでも相手に心理的プレッシャーを与えることが出来るのです。
次に、サーブを返した後のやや守備的なラリーを我慢強く戦うことを意識しましょう。
サーブやその次のボールで攻撃されたとしても、時間的・空間的な余裕をつくるボールを打つことができれば相手は決め切れず、無理をして自滅するか、ペースを落としてラリー戦に持ち込むかしかなくなり、サーブのアドバンテージを消すことが出来るのです。
このように、リターンゲームは相手にあと1球多く打たせることを念頭に置いて戦うとブレーク率を上げることが出来るでしょう。
プレースタイル
テニスには、オールラウンド・ベースラインプレー・ネットプレーといったプレースタイルがあります。
選手それぞれがショットの得意不得意、フィジカル、正確などを総合的に判断して、最も自分に向いているものを選びます。
それぞれにメリット・デメリットがあるため、メリットを最大化しデメリットを最小化する必要があります。
テニスのシングルスの戦術:オールラウンド
オールラウンダーは、常に守備・中間・攻撃の状況判断のメリハリが重要です。
器用にサーブ・リターン・ストローク・ボレー・スマッシュをこなせるからこそオールラウンドなプレーが出来るわけですが、器用貧乏にならないようにしなくてはいけません。
今の自分の状況と相手の状況を総合的に判断し、今どのようなプレーをすべきなのか考えましょう。
当たり前ですが、オールラウンダーは攻撃すべき時は攻撃し、守備すべき時は守備し、相手の様子見をすべき時は中間のプレーをすることが全てです。
そのためには、練習や試合をしながら今のプレーは理にかなっていたのかを検証する癖をつけることが重要です。(最も効果的なのは動画を撮って客観的に振り返りをすることです。)
すると、経験値が貯まり、瞬時に正しい状況判断が出来るようになるのです。
テニスのシングルスの戦術:ストローク・ベースラインプレー
ベースライナー(カウンターパンチャー)は、ポイントのほどんどを中間からやや守備的なプレーをすることが重要です。
相手に「攻撃される」のではなく、粘り強いプレーで相手にプレッシャーをかけて「攻撃させる」ように仕向ける必要があります。
相手からすると攻撃しているはずなのに自滅してポイントを落としていっているような感覚になるでしょう。
例えば、長いラリーで相手と我慢比べをしたり、チャンスを与えても決定的なチャンスは与えなかったりするようなプレーをしたり、たまに相手を驚かすようなペースで攻撃的なプレーをしたりすることが重要です。
そのためには、常に相手が今どのようなメンタルでプレーをしているのかを観察し、わざとチャンスを与えたり、長いラリーをしたりと嫌がるプレーを心がけましょう。
そうすることで、自分のミスするリスクを最小化し、相手のミスするリスクを最大化することが出来るのです。
テニスのシングルスの戦術:サーブアンドボレー・ネットプレー
サービスアンドボレーヤー(ネットプレーヤー)は、ポイントのほどんどで攻撃的なプレーをすることが重要です。
常に攻撃をしかけることで短いラリーで相手にプレッシャーをかけてミスをさせるか、決定的なチャンスを作り出しエースを取りましょう。
攻撃がハマると相手からすると手も足も出ない状態になるでしょう。
サーブやリターンの後にネットへ向かって前進することが全てです。
現代は、サーブアンドボレーはサーブもしくはネットプレーに秀でているプレーヤーが使うもしくは相手と大きなレベル差・ポイント差がある状態でのプレー、相手が無警戒な場面でのプレーで使われています。
なぜなら、ラケットの性能やフィジカルが向上したことで、リスクを負って攻撃をしかけるよりもベースライン付近でラリーをしているほうがポイントを取る確率が高いからです。
サービスアンドボレーを成功させるためには、サーブやネットプレーのレベルを上げること、それをしかけるタイミングを間違えないことが重要です。
そうすることで、どんな戦術よりも短く簡単にポイントを取ることが出来るのです。
まとめ
今回は、シングルスにおける基本の戦術・展開パターンについて解説しました。
まずは「負けないテニス」をすることが、勝利への第1歩になります。
そのためには、目まぐるしく変化する状況下で、その都度正しい判断をすることが重要です。
ぜひこの記事で紹介した様々な要素から、自分に合ったかつ理にかなった戦い方を選びましょう。
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