こんにちは、テニスコーチの高田です。
今回は、シングルスの試合における戦術について解説をします。※ダブルスの戦術は別の記事で解説します。
テニスのセオリーをもとにシングルスの試合の戦術の基本を導き出し、さまざまなパターンや種類の戦略の解説、プロテニスプレーヤーの試合動画をお手本に分析・解説、それらを身に付けるための練習方法の解説を行います。
シングルスの戦い方は男子・女子、初心者・上級者問わず共通するルールとも呼べるセオリーを土台とし、そのうえで個性を生かしたプレースタイルを確立すべきです。
セオリーを無視すればミスだらけになってしまいますし、自分の得意なプレーがなければポイントを取ることは難しいでしょう。
あなたはシングルスに苦手意識を持っていないでしょうか?
・シングルスはダブルスと違い、コースの配球やポジションのパターンが難しい。
・コート1面を1人で守りきれない。
・試合中に1人で戦術決定をできない。
・なによりもシングルスの試合は勝てない。
もし、あなたがこのような課題を感じているならば、この記事を最後まで読み、実践することで改善が見込めるでしょう。
では、内容に入っていきましょう。
目次
試合で使えるテニスのシングルスの戦術を考える上で重要なセオリーとは?
まず、本題に入るまえにテニスのルールやコートの形・ネットの高さなどの事実から導きだされる、普遍的なセオリーについて考えてみましょう。
なぜなら、セオリーを無視した戦術では1ポイントや1ゲームを取れたとしても、1試合や1トーナメントを勝ち切ることは難しいからです。
どうしても試合になるとセオリーよりも自分の得意なショットや相手の苦手なショットに頼りがち(それだけで勝てる相手ならそれでも構いません!)ですが、それによって自分がセオリーから外れたプレーをしていると、どこかで無理が生じて気付いたら形勢を逆転されているというパターンは多々あります。
きちんとテニスのセオリーを理解し、常に自分のプレーがセオリーから外れないもしくは外れるとしたら意図的に外すように、俯瞰的な視点を持っておきましょう。
まず、考えて欲しいのは「テニスはどうやったら勝てるスポーツなのか?」という問いです。
指導しているジュニア選手に意見を聞くと「相手が取れないところにボールを打つ」、「相手よりも1球多くボールを返す」、「相手の弱点を突く」などなど様々な意見が返ってきます。
確かにどれも正解ですが、テニスというスポーツの本質には辿り着いていません。
テニスは、(1セットマッチであれば)相手が4ポイント取るまえに自分が4ポイント取ることを6回繰り返せば勝てるスポーツです。(厳密にいえばデュース等もありますがここでは割愛します。)
ここからわかることはまず相手にポイントを取られない=「負けないテニス」をすることが重要で、その次にポイントを取る=「勝つテニス」をすることが重要だということです。
では、次に負けないテニス・勝つテニスとはどのようなテニスなのかを考えていきましょう。
負けないテニス=ポイントを取られないテニスとは、
(1)自分がミスをしない(Forced・Unforced問わず)
(2)相手にエースを取られない
ようなプレーをすることです。
勝つテニス=ポイントを取るテニスとは、
(3)相手にミスをさせる
(4)自分がエースを取る
ようなプレーをすることです。
優先順位としては、負けないテニス>勝つテニスであり、ミス>エース(一般的に試合ではミスによるポイントの方がエースよりも多くなるから)となります。
つまり、(1)自分がミスをしない(Forced・Unforced問わず)、(2)相手にエースを取られない、(3)相手にミスをさせる、(4)自分がエースを取るという優先順位を重視したプレーこそ、テニスの道理に適ったセオリー通りのプレーだと言えるのです。
これまでの自分の試合でのプレーとこのセオリーを比較してみて下さい。
どうしても無理をしてラインぎりぎりを狙ってしまってはいないでしょうか?
ミスを恐れるあまりボールが甘くなり、エースばかり取られていないでしょうか?
ストレスが溜まるような最悪な試合ほど、(1)~(4)の優先順位がバラバラなプレーをしているのです。
そして、常に勝ち続けている人ほど、(1)~(4)の優先順位を守ってプレーしているのです。
試合で使えるテニスのシングルスの戦術の基本的な考え方
では、このようなセオリーに基づいて、どのような戦い方をすれば良いのかを考えてみましょう。
まずは、負けないテニスをしなくてはいけません。
つまり、自分がアンフォーストエラー(凡ミス)をしない、自分がフォーストエラー(させられたミス)をしない、エースを取られないようなプレーが重要になります。
では、あなたはどんなときにミスをしたり、エースを取られたりするのか考えてみましょう。
まず、アンフォーストエラーをしにくくするプレーについて考えてみましょう。そのためには、アウトやネットをしにくい配球について考える必要があります。
単純にするために、「クロス」と「ストレート」の2種類のショットで考えると、どちらのショットの方がより安全でしょうか?
ちなみにこれはセオリーの話なので自分や相手の得意・不得意などは考慮しません。
答えは、「クロス」です。
なぜなら、1)クロスの方がストレートに比べて距離が長いから、2)クロスの方がストレートよりも通す部分のネットの高さが低いからです。
コートのサイドラインと平行に打った場合とコートの対角線上に打った場合では約140cm、シングルスポールとセンターベルトのネットの高さは約15cm(ボール2個分)も差があります。
つまり、ストレートに打てばかなり大きなアウトになるボールも、ストレートに打てば確実にネットにかかるボールもクロスに打てばインになるのです。
次に、フォーストエラーやエースを取られにくくするプレーについて考えてみましょう。そのためには、動く距離と時間について考える必要があります。
長い距離を走らされたり、準備する時間を失ったりすれば、自分がミスする確率も相手がエースを取る確率も高くなります。
これも単純にするために、「クロス」と「ストレート」の2種類のショットで考えると、どちらのショットを打った方がより相手の返球に対して動く距離と時間に余裕が出るでしょうか?
答えは「クロス」です。
なぜなら、1)クロスの方がストレートより距離が長いのでボールが相手に届くまで時間がかかるから、2)クロスに打った方がストレートに打つより戻る位置が近くなるから(クロスに打った方がストレートに打つよりも動く距離が短くなるから)です。
クロスの方がストレートよりも距離が長いというのは前述した通りなので、同じ速度のボールを打つならばクロスに打った方が時間に余裕を作ることが出来ることは明白でしょう。
また、打った後に戻るポジションがクロスに打った場合とストレートに打った場合とでは異なります。
相手が打てる範囲の真ん中にポジションを取ることが基本です。
例えば、デュースサイドからクロスにボールを打った場合はセンターマークよりもややデュースサイド寄り、ストレートにボールを打った場合はセンターマークよりもややアドバンテージサイド寄りになります。
さて、ここからは「勝つテニス」について考えていきましょう。
つまり、相手にミスをさせる、自分がエースを取るようなプレーが重要になります。
これは、先ほど考えた自分がミスをしない、相手にエースを取られないプレーを参考にすれば答えは出るでしょう。
単純にするために、「クロス」と「ストレート」の2種類のショットで考えると、どちらのショットを打った方がより相手の動く距離を長くかつ時間を奪うことが出来るでしょうか?
答えは「ストレート」です。
なぜなら、1)ストレートの方がクロスより距離が短いのでボールが相手に届くまでの時間が短くなるから、2)ストレートに打った方がクロスに打つよりも相手の動く距離が長くなるからです。
このように、コートの大きさという普遍的なことから「距離(高さ)」と「時間」と「動く距離」の差を考えることで、自分のミスと相手のエースを減らす「負けないテニス」と相手のミスと自分のエースを増やす「勝つテニス」のプレーを導き出すことが出来るのです。
では、最後にこれまでのシングルスにおける「負けないテニス」と「勝つテニス」の議論をまとめて、シングルスの戦術の基本を導き出しましょう。
結論から言うとシングルスのセオリーは「クロスでラリーを作って、ストレートに決める(攻撃する)」というものになります。
なぜなら、「負けないテニス」をベースに「勝つテニス」を展開することが出来るからです。
クロスコートでラリーを組み立てながら、相手がしびれを切らしてストレートに返してきたり、振り遅れてストレートやコート中央に返してきたり、ミスヒットでコート内に甘いチャンスボールを返してきたりしたら、それをすかさずオープンコート(相手のいないコート)に攻撃すれば、最もミスする・エースを取られる確率を下げたまま、ミスさせる・エースを取る確率を高めることが出来るのです。
このようなシングルスの戦術論を理解し、実践すれば、今のあなたの技術のままでもポイント獲得率を上げることが出来るでしょう。
試合で使えるテニスのシングルスの戦術パターン・種類
ここまで抽象的なセオリー・戦術論を解説してきました。
ここからはより具体的にいくつかのシチュエーションを挙げて、それぞれについて戦い方を考えていきましょう。
※質問等があり次第、随時更新します。
〇 ゲームの種類
テニスの試合には、自分がサーブからはじまるサービスゲームとリターンからはじまるリターンゲームがあります。
基本的には、お互いにサービスゲームをキープし、リターンゲームで数少ないチャンスを生かしてブレイクするという形になります。
それぞれの特徴を理解して、戦い方を考えることが重要です。
テニスのシングルスの戦術:サービスゲーム(サーブからの展開)
サービスゲームは常にサーブ「攻撃」からスタートすることが出来るので、攻撃を保ったまま短いラリーでポイントを終わらせることが重要です。
サーブを打ち、返ってきたレシーブをさらに攻撃しポイントする、もしくはその後ネットプレーでポイントするという3~5ラリー程度で終われるとベストです。
そのためには、サーブのコース・球種の打ち分けの精度やその配球がとても重要になります。
サーブをワイドに打って相手をコートの外側に追い出したり、ボディーに打ってレシーブを詰まらせたり、センターに打ってエースを取ったりできると、攻撃のバリュエーションが増えるでしょう。
おおむね「ワイド:ボディー・センター(ティー)=7:3」の割合で打つべきだと言われています。
なぜなら、ワイドに逃げていくような回転系のサーブを打ち、3球目をオープンコートに打つことで相手を10m以上走らせることが出来るので、ミスをさせる・エースを取ることが容易だからです。
このパターンを軸に、ボディーやセンターのサーブを使うことでサービスゲームを固くキープすることが出来るでしょう。
テニスのシングルスの戦術:リターンゲーム(リターンからの展開)
リターンゲームは常にリターン「守備」からスタートするので、守備から中間、中間から攻撃へと移っていけるようなプレーをすることが重要です。
サーブを高い確率でコートに返し、相手の攻撃に耐えて中間へと持ち直し、あわよくば攻撃することで相手にプレッシャーをかけることが出来ればベターです。(相手は攻撃からはじまるのではやい展開でポイントを取りきれないとプレッシャーがかかります。)
そのためには、リターンの精度とその後の中間から守備よりのラリーが重要になります。
まずはサーブを返すことでもう1球多く相手にプレーさせることを意識しましょう。
もちろん、深いコースを狙ったリターンを打っていきなり形成を逆転出来ればそれにこしたことはありませんが、リターンは返すだけでも相手に心理的プレッシャーを与えることが出来るのです。
次に、サーブを返した後のやや守備的なラリーを我慢強く戦うことを意識しましょう。
サーブやその次のボールで攻撃されたとしても、時間的・空間的な余裕をつくるボールを打つことができれば相手は決め切れず無理をして自滅するか、ペースを落としてラリー戦に持ち込むかしかなくなり、サーブのアドバンテージを消すことが出来るのです。
このように、リターンゲームは相手にあと1球多く打たせることを念頭に置いて戦うとブレーク率を上げることが出来るでしょう。
〇 プレースタイル
テニスには、オールラウンド・ネットプレー・ベースラインプレーといったプレースタイルがあります。
選手それぞれがショットの得意不得意、フィジカル、正確などを総合的に判断して、最も自分に向いているものを選びます。
それぞれにメリット・デメリットがあるため、メリットを最大化しデメリット最小化する必要があります。
テニスのシングルスの戦術:オールラウンド
オールラウンダーは、常に守備・中間・攻撃の状況判断のメリハリが重要です。
器用にサーブ・リターン・ストローク・ボレー・スマッシュをこなせるからこそオールラウンドなプレーが出来るわけですが、器用貧乏にならないようにしなくてはいけません。
今の自分の状況と相手の状況を総合的に判断し、今どのようなプレーをすべきなのか考えましょう。
当たり前ですが、オールラウンダーは攻撃すべき時は攻撃し、守備すべき時は守備し、相手の様子見をすべき時は中間のプレーをすることが全てです。
そのためには、練習や試合をしながら今のプレーは理にかなっていたのかを検証する癖をつけることが重要です。(最も効果的なのは動画を撮って客観的に振り返りをすることです。)
すると、経験値が貯まり、瞬時に正しい状況判断が出来るようになるのです。
テニスのシングルスの戦術:ストローク・ベースラインプレー
ベースライナー(カウンターパンチャー)は、ポイントのほどんどを中間からやや守備的なプレーをすることが重要です。
相手に「攻撃される」のではなく、粘り強いプレーで相手にプレッシャーをかけて「攻撃させる」ように仕向ける必要があります。
相手からすると攻撃しているはずなのに自滅してポイントを落としていっているような感覚になるでしょう。
例えば、長いラリーで相手と我慢比べをしたり、チャンスを与えても決定的なチャンスは与えなかったりするようなプレーをしたり、たまに相手を驚かすようなペースで攻撃的なプレーをしたりすることが重要です。
そのためには、常に相手が今どのようなメンタルでプレーをしているのかを観察し、わざとチャンスを与えたり、長いラリーをしたりと嫌がるプレーを心がけましょう。
そうすることで、自分のミスするリスクを最小化し、相手のミスするリスクを最大化することが出来るのです。
テニスのシングルスの戦術:サーブアンドボレー・ネットプレー
サービスアンドボレーヤー(ネットプレーヤー)は、ポイントのほどんどで攻撃的なプレーをすることが重要です。
常に攻撃をしかけることで短いラリーで相手にプレッシャーをかけてミスをさせるか、決定的なチャンスを作り出しエースを取りましょう。
攻撃がハマると相手からすると手も足も出ない状態になるでしょう。
サーブやリターンの後にネットへ向かって前進することが全てです。
現代は、サーブアンドボレーはサーブもしくはネットプレーに秀でているプレーヤーが使うもしくは相手と大きなレベル差・ポイント差がある状態でのプレー、相手が無警戒な場面でのプレーで使われています。
なぜなら、ラケットの性能やフィジカルが向上したことで、リスクを負って攻撃をしかけるよりもベースライン付近でラリーをしているほうがポイントを取る確率が高いからです。
サービスアンドボレーを成功させるためには、サーブやネットプレーのレベルを上げること、それをしかけるタイミングを間違えないことが重要です。
そうすることで、どんな戦術よりも短く簡単にポイントを取ることが出来るのです。
〇 レベル・人
テニスは、プレーする人の特徴によって適した戦術が変わります。
セオリーに基づいて自分に合った戦術を選べば、自分の持っている技術や体力を最大限に生かすことができるでしょう。
テニスのシングルスの戦術:初心者
初心者の場合は、よりセオリーに忠実に戦うことが重要になります。
テニスのセオリーである(1)ミスをしない、(2)エースを取られないという「負けないテニス」に注力し、1球でも多く相手にボールを打たせるようにしましょう。
そのためには、試合中は打ち方や狙う場所などは特に意識せず、ボールから目を離すことなくひたすら追いかけて相手コートに返すことに意識を集中しましょう。
テニスのシングルスの戦術:女子
女子の場合は、基本的なシングルスの戦い方よりもリターンゲームを取ること、ボールスピード・テンポのはやいラリー戦に打ち負けないことが重要になります。
女子は男子に比べてサービス力が劣る傾向にあるため、相手のサービスゲームをブレイクし合う展開(ブレイク合戦)になりがちです。
そのため、リターンからより攻撃的に打ち、リターンゲームの主導権を握ることが重要です。
また、女子は男子に比べてストロークのショットの回転数が少ないため、低くて速いボールの打ち合いが多くなります。
そのため、はやいテンポのラリーについていけるフットワークやシンプルかつコンパクトなスイング動作を身に付けることが大切でしょう。
テニスのシングルスの戦術:左利き
左利きの場合は、基本的なシングルスの戦い方よりもアドバンテージサイドの外側を意識して使うことが重要になります。
サーブからラリー戦まで常に相手のバックハンド側(右利きの場合)にボールを集め、プレッシャーをかけ続けることが重要です。
なぜなら、左利きが打つサーブもストロークもかかっている回転が独特で、慣れていない限りそう簡単に攻略できるものではないからです。
フォアハンド側にオープンコートが出来ても序盤は相手を振らずにしつこくバックハンド側にボールを集め、相手が慣れてきた中盤から終盤でオープンコートへと展開するパターンを使うと良いでしょう。
そのため、アドバンテージサイドのクロスラリーやサーブ・リターンからアドバンテージサイドの展開に持っていくためのショットを磨くことが重要です。
テニスのシングルスの戦術:対格上
相手が格上の場合は、基本的なシングルスの戦い方よりも「攻撃されないように攻撃する」ことによりこだわってプレーすることが重要です。
言い換えるならば、格上に勝つためには、同格の相手と戦うよりもリスクを上げて戦うしかありません。
なぜなら、ベースラインからいつも中間や守備で打っているボールを打てば相手に攻撃されてしまいますし、チャンスの場面でいつも攻撃で打っているボールを打ったら相手に完璧な守備をされてしまうからです。
ただし、リスクを上げすぎてセオリーから大きく外れ、相手がなにもしていないにもかかわらずミスだらけで負けてしまっては元も子もありません。(よく「名前負け」と言いますが、それはこのことを指します。)
きちんとリスクマネジメントをしながらも、いつもよりも少し攻撃的にプレーするというバランス感覚が重要です。
そのためには普段から2対1で練習をしたり、不利な状態(ランニングショット)からの練習をしたりして、負荷がかかった状態でもポイントを取れるようになりましょう。
テニスのシングルスの戦術:対格下
相手が格下の場合は、基本的なシングルスの戦い方に則ってプレーすることが重要です。
格下に対しては無駄にリスクを上げ過ぎたり、下げ過ぎたりして自滅してはいけません。格下に負けるときはよほど調子が悪いときか、調子に乗ったプレーをしたときです。
なぜなら、普通に打ち合えば勝てるのが格下だからです。
相手のボールがゆっくりだからといって攻撃しすぎてミスが止まらなくなったり、相手のボールのペースに合わせてゆっくりラリーしてしまい相手が主導権を握ったりというのはよくある話です。
きちんと基本的な戦い方に忠実に、いつも通りの自分のペースでプレーをすることが重要です。
そのためには、普段から自分の絶対的な得点パターンや、基本に忠実なサーブやリターンからの展開を確実に身に付けておきましょう。
テニスのシングルスの戦術:対同格
相手が同格の場合は、基本的なシングルスの戦い方に則りながらその試合の流れに応じてプレーを変更していくことが重要です。
テニスの試合において同格の相手との1戦が1番精神的・肉体的にタフです。
なぜなら、お互いに同じような質のプレーが出来た場合なかなか差がつかないので、ごくわずかなポイント差で勝ち負けが決まるからです。
基本的なシングルスの戦い方に則って序盤から中盤を戦い、その流れを汲んでプレーを変更するもしくは継続する選択をする必要があるでしょう。
そのためには、試合中常に行き来する流れや主導権を敏感に察知し、手放さないように堅実なプレーを積み重ねるようにしましょう。
〇 その他
テニスのシングルスの戦術:相手の弱点・苦手なところに配球する
テニスに限らずスポーツにおいて「自分の得意なところを相手の苦手なところにぶつける」というのは効果的な戦略といえます。
しかし、気をつけなければいけないのが相手の苦手を狙うことで発生するリスクです。
相手の苦手なところを狙うために使うショットがテニスのセオリーから大きく逸脱していたり、相手の苦手なところが相手の得意なところと紙一重だったりすると、相手の首を絞めるための作戦で自分の首を絞めてしまうことがあります。
例えば、相手がバックハンドストロークが苦手でフォアハンドストロークが得意だった場合、バックハンドストローク側をしつこく狙うという作戦が立てられます。
しかし、バックハンド側にボール集められることを相手が気付いた場合は、フォアハンドストロークで回り込まれて強打されてしまったり、バックハンド側を狙っているのにバックハンドストロークを打たせることが出来ないとさらにきわどいサイドを狙って自分のサイドアウトやネットミスが増えたりしてしまうでしょう。
これでは相手の苦手を攻めているはずが、どんどん自分のミスが増えてしまい負けてしまうでしょう。
このような場合は、一度相手をフォアハンド側に振ってからバックハンド側に振るなどの工夫をすることが必要です。
つまり、相手の苦手なところや弱点を突くという戦術はいつでも効果的であることに間違いありませんが、それに相手が対応してきたときは固執せず新たな戦術に移行する必要があるのです。
プロテニスプレーヤーのシングルスの試合の戦術を動画解説
言葉だけではわかりにくい部分も多々あるので、ここからはプロテニスプレーヤーの試合動画をお手本に解説しようと思います。(以下の動画像は全てYoutubeから引用しています。)
今回取り上げる試合は、2012年オーストラリアンオープン(全豪オープン)決勝のノバク・ジョコビッチ選手対ラファエル・ナダル選手の1stセット(~1時間20分)です。
2010年まで世界ランキング1位だったラファエル・ナダル選手と2011年に世界ランキング1位となったノバク・ジョコビッチ選手のストローカー対決です。(この時代は、BIG4と呼ばれるロジャー・フェデラー、ラファエル・ナダル、ノバク・ジョコビッチ、アンディー・マレーがほとんどのグランドスラム大会でベスト4に残っていた時代です!)
お互い粘り強いストロークが持ち味なので、長いラリーが多く見ごたえのある試合です。
まずは取り上げているプレーの動画を1度みて、そのあとに解説を読むとわかりやすいと思います。
シングルスの試合におけるサーブからの展開とリターンの重要性(28分)
まず気になったのが、動画28分のナダルがジョコビッチのサービスゲームをこの試合で初めてブレークした場面です。(2-2 アドバンテージ ナダル)
この場面、ジョコビッチはブレイクされないために一番オーソドックスかつ堅実なワイドへのサーブからオープンコートへの展開を狙っていました。
しかし、結果は浅くなったナダルのリターンをオープンコートへ打ったもののアウトしてしまい、ブレイクを許しました。
この場面で学ぶべきことは2つあります。
1つは、大切な場面であればあるほどより堅実なパターンを選ぶことが重要だということです。
ファーストサーブを確率良くワイドにコントロールし、相手をコートの外側に追い出してから、確実にオープンコートに仕留めるというのはサービスゲームの戦い方の軸です。
もう1つは、リターンは返し続けるだけでも価値があるということです。
ナダルがこの大切な局面でミスをせずにリターンをコートに返したことでジョコビッチはプレッシャーを感じ、ミスさせられた形になりました。(この後のお互いのブレイクの場面でも同じく「リターンを返す」というプレッシャーがポイントに結びつきました。)
左利き特有のシングルスの配球と戦術(30分)
次に気になったのが、動画30分のナダルのサービスゲームでのラリー戦です。(3-2 15-0)
この場面、ナダルはサーブ・リターンの後、バックハンドスライスでストレートへ、バックハンドドライブでストレートへとボールを配球しています。
これは左利き特有の戦術です。アドバンテージサイドにボールを集めることで、得意なフォアハンドを使ったラリーに展開するための配球です。
この場面に限らず試合中にナダルはこの戦術を何度も試みていますが、このセットではあまりポイントに結びつけることが出来ていません。
なぜなら、ジョコビッチがバックハンドストロークで攻撃的にクロスへと切り返すことが出来ているからです。
ナダルはストロークの守備力がかなり高いため、クロスに大きく振られるリスクを取ってでもアドバンテージサイドのラリーに持ち込むために(オープンコートでなくても)バックハンドストロークをストレートに配球していますが、その守備力を越える攻撃的なバックハンドストロークでジョコビッチはこの戦術を封じることができているのです。
左利きはこのようにアドバンテージサイドでのフォアハンドストロークを使ってラリーを展開するために、バックハンドストロークのストレートを多用します。
そのときには、相手のバックハンドストロークのクロスへの強打によって振られることをきちんと頭に入れて、一度守備をしてからアドバンテージサイドのラリーに持ち込む意識をもってプレーしましょう。
テニスのシングルスのセオリーが詰まったロングラリ―(1時間8分)
最後に気になったのが、動画1時間8分のジョコビッチのサービスゲームでのラリー戦です。(5-5 30-15)
この場面、ジョコビッチはセカンドサーブからラリーに持ち込まれるもののナダルをアドバンテージサイドからデュースサードへと振り、攻撃をしかけていきます。
その攻撃に対して、ナダルはコート中央付近にバックハンドスライスで守備し、デュースサイドでのラリーとなり、ジョコビッチがフォアハンドストロークのアングルショットでナダルをコートの外に追い出しました。
その攻撃に対して、ナダルはまたコート中央付近にバックハンドスライスで守備し、ジョコビッチのボールがデュースサイドに甘くなり、ナダルがバックハンドストロークの角度のついたクロスの強打と最後はフォアハンドのチャンスボールでジョコビッチの逆を突きポイントしました。
このポイントはお互いのストローク力が高いからこそ生まれた素晴らしいロングラリーでした。
このラリーから学ぶべきことは2つあります。
1つは、ラリーの中で攻撃しきれないと一気に守備へと追い込まれることがあるということです。
ジョコビッチがセカンドサーブからでもナダルを左右に振り攻撃をしかけ、それをナダルが凌ぎ、ラリー戦からまたジョコビッチが攻撃をしかけ、またそれをナダルが凌ぎ、最後はナダルが逆転して攻撃でフィニッシュしました。
ずっとジョコビッチがラリーの主導権を握って攻撃し続けていたにもかかわらず、ナダルの最後の守備によって一気に形勢が逆転したということです。
つまり、攻撃は中途半端にならないようによりアグレッシブに注意深く行うことが重要だということです。
もう1つは、コート中央深くにコントロールするショットは守備として有効だということです。
このラリーでは、ジョコビッチの2回の攻撃をナダルがこのショットで凌いで、最終的に逆転しています。
コート中央深くにスライスやムーンボールを打つことで、時間をつくるだけでなく相手の返球範囲を狭めることができるのです。
もちろん、守備の場面で全てこのショットを打っていたら相手に読まれてしまいますが、守備の一手として身に付けておくと良いでしょう。
テニスのシングルスの戦術を身に付けるための練習方法
最後にこれまで解説したようなシングルスの戦術を身に付けるために必要な練習メニューをいくつか紹介したいと思います。
ここで紹介するのはあくまでも一例なので、慣れてきたら自分なりにアレンジしましょう。
テニスのシングルスの戦術練習メニュー:サーブ・レシーブ
シングルスの試合において最も重要な役割を果たすのがサーブとレシーブ(と3球目のショット)です。
サーブとその次のショットで主導権を握れるか、レシーブで相手に主導権を握らせないかが決まります。
つまり、サーブとリターンを磨くことがシングルスの戦術を身に付けるためには不可欠だということです。
サーブとレシーブとその次のボールまでを1セットとして練習を行います。
サーバーは、コース・球種・ファースト/セカンドなどを打ち分け、そのレシーブをオープンコートに攻撃するところまでをひたすら反復しましょう。
レシーバーは、サーブを確率良くコートに返球することを軸に、ファーストサーブであれば攻撃されにくいレシーブ(例:深い相手の足元など)、セカンドサーブであれば攻撃的なレシーブ(例:コートの中にステップインして叩くなど)を練習しましょう。
テニスのシングルスの戦術練習メニュー:1on1ラリー
シングルスの練習で最もオーソドックスな練習メニューが1対1のラリーです。
サーブ・レシーブ後の展開を練習するならこのメニューがおすすめです。
1面もしくは半面でフリーもしくはルール付きのラリー練習を行います。
コートの大きさについては、最初半面から初めて慣れてきたら1面にしても構いませんし、ルールに応じて変えても良いでしょう。
ルールについては、中間・攻撃・守備のいずれかからスタートするようにルール付けをすると良いでしょう。
中間は、クロスラリーからスタートしてどちらかのボールが浅くなった・コート中央やストレートに返ったところからオープンコートに展開する最もオーソドックスな形の練習をすると良いでしょう。
攻撃は、チャンスボールからスタートしてネットプレーに展開して決め切る練習をすると良いでしょう。
守備は、攻撃の逆側かコートの端からスタートして走らされたところから中間に戻す練習をすると良いでしょう。
テニスのシングルスの戦術練習メニュー:2on1ラリー
シングルスの練習で負荷をかけるための練習メニューが2対1のラリーです。
シード選手や格上の選手に勝つためには、練習で負荷をかける必要があります。
格上の選手を相手にするといつもエースを取れているショットでも完璧に守備をして中間に戻してきますし、いつも攻撃されないショットを打ち込まれます。
つまり、この経験を練習で疑似的に作り出して対応できるようにしておくことが重要なのです。
1面に2人対1人で入り、2ストローク対1ストローク(中間)・2ボレー対1ストローク(守備)、2ストローク対1ボレー(攻撃)の練習を行います。
2人の方は、常に1つのプレーを2人で作るという意識を持つことが重要です。2人でシード選手や格上選手1人の役目を果たすので、1人当たりの範囲が半面だからこそ出来るはやい攻撃や完璧な守備をしましょう。
ただひたすら1人を振り回すのではなく、2人で1プレーを完成させるような意識付けが重要なのです。
1人の方は、いつもより1段階無理をしてプレーする意識を持つことが重要です。
もちろん、無理をしてミスだらけになってしまっては元も子もありませんが、いつもより少し攻撃のボールのタイミング・スピードをはやく、いつもより少し中間のボールを深く、いつもより少し守備のボールを深くする意識を持ちましょう。
そうすることで、試合で格上選手と当たってもうろたえることはないでしょう。2人より強い1人なんてなかなかいませんからね。
テニスのシングルスの戦術練習メニュー:練習試合・ポイント練習
サーブ・レシーブとラリーの練習をつなげる役割を果たすのが練習試合やポイント練習です。
練習の初めにやって課題を洗い出すのも良いですし、練習の最後にやって練習の成果を確かめるのも良いでしょう。
試合と同じようにフリーで行ったり、サーブやポイント序盤のプレーにルールをつけたりすると良いでしょう。
フリーの場合は、戦い方が身についているかを確かめたり、ポイントに応じて様々なプレーを試したりしましょう。
ルール付きの場合は、そのルールに則って質の高いプレーをすることを意識しましょう。(例:ファーストサーブをワイド縛り、セカンドサーブのみ、サーブの次の球を必ずオープンコートなど)
このような練習をすることで、試合で使えるシングルスの戦術を身に付けることが出来るでしょう。
まとめ
今回は、テニスの試合におけるシングルスの戦術について詳しく解説しました。
戦術というのは試合に勝つための手段です。
当たり前ですが、テニスのセオリーに則っていない戦い方は、優れた戦術とは言えません。
200km/hを越えるビッグサーブを持っていても、コート後方からでも攻撃できるビッグフォアハンドを持っていても、どこからでもエースを取れる芸術的なネットプレーを持っていても、勝てるとは限らないのがテニスのおもしろいところです。
テニスのセオリーとそれに則った戦術の基本を理解したうえで、自分の個性に合った戦術を組み立てることが試合に勝つことに繋がるのです。
もし、あなたが本気で「上手くなりたい!」、「勝ちたい!」と思うなら、僕は全力で応援します!
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